情報技術を使った多言語コミュニケーションの支援。感情も翻訳することができる未来社会を。Ari Hautasaari先生インタビュー

Update:2021年2月4日 / Category: News


                                        

ヒューマンインタフェース、インタラクション/CSCWを専門に多言語コミュニケーションや感情的価値について研究されているAri Hautasaari先生。研究のバックグラウンドや内容、興味のあるトレンドについてお聞きしました。

Ari Hautasaari/特任講師/情報学環

-研究テーマがヒューマンインタフェース、インタラクション/CSCWということなのですが、主にどんなことを研究されているのでしょうか?

多言語コミュニケーションの支援に興味を持っています。その支援方法の一つは「機械翻訳を用いたコミュニケーション」です。パソコンやスマホなどを使って言語を翻訳することで、母国語が違う人同士のコミュニケーションを支援する技術ですね。

-何がきっかけで機械翻訳に関心を持たれたのですか?

私はフィンランド出身で、経済学と情報処理の両方に興味があったのですが、大学では情報処理の中でマーケティングのことも学べるということで、情報処理のコースへ進みました。修士課程の時に奈良先端科学技術大学院大学に留学するチャンスがあり日本に来たのですが、そこで機械翻訳を用いたコミュニケーションというのを初めて耳にしました。私自身、日本での生活で言語的な壁を感じていたので情報技術を使って何かできないかと思っていました。ただ、ヨーロッパでは言語によるコミュニケーションの壁は、その言語を学べばいいという考えのみでした。それが、日本ではテクノジーによって言語コミュニケーションによる課題解決を考えることは研究になると言われて、その時に、人生の道が開けた感じでしたね。

他国でも機械で書類を翻訳するプロジェクトはありますが、情報技術を使ってコミュニケーションを支援するという研究は日本だからこそ取り組みやすいという印象があります。今、取り組んでいるマーケットプレイスの研究では、自分のバックグラウンドである情報通信、言語コミュニケーション、もともとあった経済学への関心が活かせていると思っています。

メモリーマーケットプレイス。
中古品にある想い出という感情的価値の交換を可能にする未来の市場。

-メルカリと共同研究をされていますが、研究テーマである「感情的価値」、「メモリーマーケットプレイス」というキーワードについて教えてください。昔から研究されてきている概念なのでしょうか?

例えば初めてオンラインでモノを売買した時、それがとてもスムーズに取引が終了すれば、その時の経験は購買したことだけでなく、”メルカリのサービス=良い”というイメージへつながり、メルカリという企業ブランドに対する感情的価値が上がったと言えます。これはマーケティング分野におけるブランディングとして従来よりある概念です。

一方、私が研究を進めているのは中古品というモノにある想い出という感情的価値です。例えば、ピアノを売るときに「6歳から娘が10年使いました。大事にしてください。」という感情的価値が買い手に伝わると価格が高くなる可能性があります。もし、ピアノを同じ様な家族が購入して、また、10年使用すると更に感情的価値は上がります。このように中古品の売買では、モノだけでなくて想い出という感情的価値も交換していると考え、その価値を技術によって買い手へ伝えることができたら、素晴らしいと思っています。

そして、そのビジョンを「メモリーマーケットプレイス」というプロジェクト名にしています。本当は「想い出市場」とつけたかったのですが、大阪にすでにあるようで。笑

-機械翻訳や多言語コミュニケーションと感情的価値はどのような関わりがあるのでしょうか?

今後オンラインでのモノの売買はさらに国際的になっていきます。その様な場において感情的なやりとりをどう支援していくべきかが課題になります。機械翻訳では感情的な情報は翻訳されず、翻訳されたメッセージは、機械で作成されたものであることが相手にはすぐわかってしまいます。また、機械翻訳によるメッセージの文面だけだとその言語の非ネイティブには感情が伝わらず、伝え手が少しだけネガティブな意味を込めた場合も、相手はすごくネガティブに感じてしまうという研究結果もあります。このようなことから、グローバルオンラインマーケットで感情を適切に伝え合うには、テクノロジーによる新しい支援システムが必要だと考えています。

-メモリーマーケットプレイスは、将来どのようになっていきたいですか?

将来的にはグローバルオンラインマーケットにおいて、誰もが円滑にコミュニケーションをすることができる技術を開発していきたいです。それは、今回お話しした企業のブランドに対する感情的価値の側面だけではなく、オンラインサービスのカスタマー間で売買する際にも、想い出の感情的価値があるものを取引できるような、ユーザーにも役に立つ情報技術を作りたいと思っています。

 

-最近注目しているトレンドがあれば教えてください。

ポストコロナの働き方については非常に注目しています。コロナになる前と後では双方にメリットデメリットがあるので、二つの価値・環境を合わせるハイブリッドな働き方を考える必要があると思っています。

個人的には唐辛子の栽培をベランダで始めました。在宅勤務にならなければ取り組まなかったことです。この新しい発見のおかげで、持続可能な農業(sustainable agriculture) に関する技術・手法・研究にも興味を持っています。