木の素材としての価値を伝えるツール「Mokume」再生利用可能な素材が未来にもたらすもの 【Maria Larssonさんインタビュー】

Update:2021年4月26日 / Category: News


     photo by Enrico Bortoluzzi

     Maria

価値交換工学RAであるMaria Larssonさん(情報理工学系研究科創造情報学専攻 五十嵐研究室)
ご自身の専門分野や価値交換工学 萌芽研究のテーマについてお話を伺いました。

-研究テーマの「Mokume」について教えてください。

名前の通り木材の内部にある「木目」の構造に注目した研究です。木目を予測表現するツールとその情報を利用した木製品製作の手助けとなるツールを作成するプロジェクトです。

プラスティックやメタルなどの素材は構造が決まっていますが、木は非常にたくさんの木目模様を持っており見た目や表面の手触り、木製品の製作にとても影響しています。そこで、外観の情報をもとに木の内部の木目を予測する研究を始めました。従来の方法では木材を検査した場合に外観しかわかりませんでしたが、内部がどうなっているか予測できれば「切るとどうなるのか?」「負荷がかかった時や湿度が変化した時(乾燥や吸水など)にどのように変形するのか?」といったことがわかり木の素材としての価値をより詳細に知ることができます。

例えば、木材を扱う熟練の職人は素材の特性や木目に合わせて直感的にどの方向に切れば機能的に美しくなるのか、素材が有効的に使えるかといった判断をする技術を持っています。「Mokume」の研究により木の内部構造を予測できるツールを開発すれば、誰もが熟練の職人のように素材資源の特性を反映した機能美や有効活用といったカスタマイズをすることが可能となります。

-「Tsugite」というプロジェクトも手掛けていらっしゃいますが、「Mokume」との違いは何でしょうか?(Tsugite 記事参照)

どちらも木に着目していますが「Tsugite」は誰でも木の接合部を設計・製作できるツールなのに対して、「Mokume」は木の内部構造に注目し木材の内部のパターンを予測するツールです。もともとは「Tsugite」の研究をしている中で接合部の耐久性を左右するのに繊維方向がとても重要だということ気づき、特定の木目パターンに合わせて接合部の形状を最適化できないかと考えたことがきっかけで「Mokume」のプロジェクトが始まりました。

-なぜ、価値交換工学に興味をもって萌芽研究RAに応募しようと思いましたか?

 価値交換工学のメンバーにはいろいろな分野の研究者が参加されています。そのためRAとして参加することで他分野の方と親交を持つことができ、意見交換やコラボレーションなどを通じていつもと違うアイデアに出会える機会だと思いました。

また、価値交換工学の中で自分の研究の社会実装について考えることは良いモチベーションになります。普段の研究活動は研究そのものにフォーカスすることに費やしてしまいますが、価値交換工学はより実用的な面を重視することも求められると思っています。研究者として異なる考え方や心構えに触れられる機会を得られるのはとても良いことだと思っています。

-なぜ、木材に興味を持たれたのですか?

以前は、建築家として働いていてサステナビリティのことをよく意識していました。建物を作る時は基本的に鉄、木、コンクリートのいずれかが素材として使用されます。鉄やコンクリートは木を使った製品のように再生利用が簡単ではなく使い続けることで価値が上がるわけではないので、それらの点ではサステナブルとは言えないと思っています。そこで木材を使った建物に興味を持ち木の研究を始めました。

-研究をしていて楽しい時、達成感があるのはどんな時ですか。

建築家としての仕事は必要なタスクをこなすことが多かったのですが、研究はそうではなく自分の関心あることを探求する取り組みです。研究発表を通して他の研究者や建築に携わる方などが興味を持ってくれたり、共感してくれたりと反応が得られた時はとても嬉しいです。

-研究を進めるにあたり最近注目しているトレンドは?

最近は機械学習やディープラーニング、3Dジオメトリに熱心に取り組んでいます。それ以外にもバイオロジー、植物学といった分野、ネットワークにも触れるようにしています。例えば、出身国であるスウェーデンにあるルレア大学は木の丸太を丸ごとスキャンできるCTラボを持っています。彼らとコミュニケーションをとり、節の多い松の木をCTスキャンした大規模なデータセットを入手したりもしました。そのように他の分野と連携したりインスピレーションを得たりしています。

-実現したい未来社会、研究がこんな風に役立ったら良いなと思うことを教えてください。

常にサスティナビリティへの意識があります。木で良いモノを製作すれば楽しいし、持続可能な製品となります。木の素材の価値分析、価値創造、価値交換のための手法とツールを開発し「切った時にどう見えるか?」「負荷や湿度の変化によってどう変形するのか?」といった木の内部に関するより多くの情報を視覚化できることで、市場での木の素材の交換を促進していきたいです。

(関連リンク)
http://ma-la.com/home.html