UIST2020でpoimoの論文が採択され「BEST DEMO AWARD」を受賞しました!東京大学とmercari R4Dが共同で開発を行っているポータブルモビリティ「poimo」の研究が評価された今回の受賞。トップカンファレンスの臨場感や受賞の裏側、インクルーシブな社会実現のための展望について受賞者へ聞きました。

「BEST DEMO AWARD」受賞者紹介

新山 龍馬 / NIIYAMA Ryuma
(大学院情報理工学系研究科講師。専門分野は知能ロボティクス)

佐藤 宏樹 / SATO Hiroki
(大学院情報理工学系研究科 学術支援専門職員。poimoプロジェクトリーダー)

鳴海 紘也 / NARUMI Koya
(大学院情報学環助教。専門分野はヒューマン・コンピュータ・インタラクション、ソフトロボティクス、
デジタル・ファブリケーション)

山村 亮介 / YAMAMURA Ryosuke
(mercari R4D リサーチャー。大学院工学系研究科共同研究員、竹芝CiP City&Tech委員会委員)



できることをやった結果。
偶然デモが盛り上がったというわけではなく、積み重ねによって得た賞

−では、まずUIST*とはどんな国際会議なのか、どんな思いを持って参加されたのか教えてください。

新山:私はUISTは3回目の参加で、縁がある国際会議です。ヒューマン・コンピュータ・インタラクション (HCI) の分野の中では、技術寄りのことを評価してくれる会議で、poimoの驚きを理解し、さらにその先の思いがけないような提案をしてくれる研究者がいる印象です。

鳴海:HCIの会議というとまずCHI**とUISTが思い浮かびますが、UISTはそれまでの内容からちょっと精度がよくなったものよりも、0が1になるかっこいい何かが見たい人が集まると思うので、poimoには非常に向いていました。

佐藤:HCIの分野でCHIとUISTは2大巨頭のようになっていて、調べていくと有名な人たちもみんなここを通っています。この2つの学会へ論文を通して参加したいという気持ちは元々あったので、ぜひ頑張ろうと思いました。

山村:私は、メルカリの立場で研究に参加しています。今回は翌日にpoimoの別の国内デモがあったため、UISTデモの現地では参加していませんが、mercariR4Dとしてトップカンファレンスを通したものがまだなかったので非常に嬉しかったです。poimoってちゃんと論文通しているんだな、ってメルカリの中でも見る目が一つ変わったので本当によかったなと。

*UIST: ACM Symposium on User Interface Software and Technologyヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野の国際会議。第33回目の今回はオンライン開催。
**CHI:The ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systemsヒューマン・コンピュータ・インタラクション分野の国際会議。

−事前に評価されているという手応えはあったのでしょうか?

鳴海:テーマ自体の良さに関してはメンバー全員に自信があったのですが、論文としての完成度は正直不十分だと思っていました。査読者が細かい部分よりも取り組んでいる課題の重要性を評価してくれたというのは嬉しいところですね。

−査読コメントって厳しいことも結構書かれるんですか?

鳴海:厳しいですね。辛いです。基本辛いですが、今回のpoimoは比較的暖かく迎えられました。

新山:ほっとしました。暖かい気持ちになった。

−今回の論文で評価された点はどこなのでしょう?

一同:査読コメント思い出さなきゃ。笑

佐藤:マテリアルが柔らかく新しいものであったのと、個々人に合わせてデザインできるカスタマイズ性がうまく噛み合っていたところが、ロジックとしてグッとくるものだったのでは。

鳴海:poimoはメディアには登場していたけど、フルペーパーという10ページぐらいの論文としては初登場でした。なので提案それ自体が純粋に評価されたというのはあります。

佐藤:あとはコロナのこともある中、できることをやった結果。ユーザインタビューも踏まえて総合的に一本通した内容になっているんじゃないかと思います。

初のオンライン開催、締切の延長。変化の中での準備期間

−デモや発表の準備はどのくらいしたのでしょうか?

鳴海:UISTに出す決心は、投稿締め切り約7ヶ月前の昨年の9月ごろ。少しづつ準備していって、締め切りの4月が迫った今年3月の1ヶ月間は本当に猛スピードで作業しました。

山村:コロナの影響で締め切りが伸びて、GW明けになって。

佐藤:著者の中にいわゆる「学生」が一人もいなく、全員が職業を持っているという珍しいメンバー構成だったので、3月頃からしか始められなかったというのが正直なところですね。

山村:印象にあるのは、コロナで輸送が止まり予定していた物が届かないかもしれないとバタバタしたこと。その代わり締め切りが延長されたので助かりました。

−コロナの影響という点では、初のオンライン開催ということでしたよね。
準備や当日もかなり状況が違ったのでは?

佐藤:発表が現実世界のプレゼンテーションではなくビデオ発表だったので、ビデオ作成の作業がありました。ただ準備する時間はむしろ短かったんじゃないかなと。現地での一発限りの発表に向けた練習や移動がないので。

鳴海:ビデオは字幕も付けられるし、今回は学会がチャットツールのディスコードを使って、質問を書き込めるようにしていたんです。話すより書く方が質問しやすいし、発表者も質問タイムの前に事前に回答を考えられる。そういう良さもありました。

急遽行った廊下からのデモ配信。
デモならではのリアルな側面も楽しんでもらう要因となった。

[デモに向けて準備をしているところ]

−デモの配信を廊下から行ったというエピソードについて教えていただけますか。

佐藤:整備している様子が面白かったので、鳴海くんが「このまま流せば良いんじゃない?」と言ったのが始まりで。実際に長い距離を走る乗り物の発表なので、その様子が見られるということがウケました。

−最初は乗るという予定ではなかったのですか?

佐藤:1日目は自分たちの後ろにpoimoがあって、粛々と説明するというのをやっていました。2日目に廊下で乗るデモに切り替えました。

鳴海:デモってある意味、論文より難しい側面もあって。お客さんが来たその瞬間に必ず成功させるということなので。poimoはまだ乗るのがある程度難しいので、リアルタイムでは危ないんじゃないかと思っていたんですけど。新山先生がデザインを何通りかやってくださったので、デモができたという感じはします。

−夜中に学校の廊下でバイクですもんね。笑
そのときに盛り上がっている感触はありましたか。

佐藤:お客が笑ってくれて、質問をいっぱいしてくれたので、興味は持ってもらえているのかなと。

鳴海:あとは、デモ審査員のAlexとGieradが非常に暖かい雰囲気だったので、こちらもとても楽しくデモすることができました。とてもありがたかったです。

新山:2日目が終わる15分ぐらい前、そろそろ撤収かなってときに「きたよー!」って感じで元気に審査員が来て。バイク乗って往復したら爆笑していましたね。それでこっちも楽しくなった。

鳴海:普通のバイクほどはうまく乗れていないんだな、結構タイヤのスキール音がうるさいんだな、といったデモならではのリアルな側面もむしろ楽しんでもらう要因でしたね。

[審査員の方々がデモを見に来られた時の様子]

子供から高齢者まで、インクルーシブな日本発の乗り物。
未来社会を目指してpoimoと共に走り続ける!

−山村さんは翌日に別の展示があったとのことでしたが、各メディアやイベントで注目が集まっていることをどう感じていますか?

山村:翌日は、ショッピングモールの一角で他社のモビリティと一緒に展示でした。意外と反応がよくて。朝は空気を入れるところから見せて。

UISTのニュースを見ていると「poimoの新バージョンがやって来たぞ!」ってtwitterに書いてくれていたり、知られているんだなって。子供も展示スペースで「ネットに載っていたの持ってきてないんですか。あれに乗りたかった。」と言ってくれたり。新しい乗り物は子供にも人気があるんだなと思いました。

−今後の目標、インクルーシブな社会を目指し次はこれいこう!ということがあれば教えてください。

佐藤:乗ってみたいという声はよく聞くので、早く乗ってもらえるように実用化したい。

鳴海:子供用とかソファ型とか種類を増やしてひとつひとつの乗り味を洗練していきたいですね。

山村:高齢者の方にも興味を持ってくださる方が多くて。足が上がりにくいので、ソファ型がとても良いみたいで。運転免許を返納すると乗るものがない、でも怖いのはいやだという話をされていたりします。

今回の論文のポイントとして、個々人に合わせてカスタマイズできるというのがあったので、やはり子供から高齢者の方までそれぞれに合わせたインクルーシブな乗り物を作りたいですね。

新山:あとはバイク型をもっとちゃんと乗れるように改良していきたいですね。poimoと共にみんな次に向かって走っていきます!

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